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カメラのズームコントロールについて理解し、アプリケーションのニーズを判断するためのクイックガイド

ズーム機能は、多くの組み込みビジョンアプリケーションにおいて欠かせない重要な要素です。本記事では、ズームの種類やそれぞれの動作原理、さらに具体的な使用シーンに至るまで、知っておくべきポイントをわかりやすく説明いたします。

写真撮影において、「ズームイン」とは、カメラを移動させることなく、被写体を大きく映し出す操作を指します。反対に「ズームアウト」は、被写体を小さく見せることを意味します。これらの操作はFOV(視野角)にも影響を及ぼし、ズームインでは視野が狭まり、ズームアウトではより広い範囲が映るようになります。

本記事では、ズーム機能の種類やその動作原理について詳しくご紹介いたします。また、e-con Systems社が開発したカメラ製品に搭載されている先進的なデジタルズーム機能についてもご説明いたします。

カメラにズーム機能が必要な理由は?

長年にわたり、カメラのズーム機能は大きく進化してきました。現在では、ズームはより柔軟で実用的な機能となっており、組み込みビジョンアプリケーションにおいては、カメラを物理的に動かすことなく、被写体を適切に捉えて素早くフレーミングすることが可能となっています。

最近では、アプリケーションのカメラにズーム機能を搭載し、鮮明な画像を拡大・抽出する必要がある使用例が以前よりも増えています。そのため、この機能は、ドキュメントリーダー、ロービジョン支援機器、デジタル顕微鏡など、最新の組み込みビジョンデバイスにおいて重要な役割を果たしています。

ズーム機能には、どのような種類があるのでしょうか?

ズーム機能は大きく分けて、デジタルズームと光学ズームの2種類に分類されます。本稿では、それぞれの技術的な仕組みを詳しくご説明いたします。そのうえで、お客様の用途や要件に応じて、最適なズーム機能をお選びいただけるようご案内いたします。

光学ズーム

光学ズームでは、レンズ内部のガラス素子が物理的に移動することで、焦点距離が変化し、ズームイン・ズームアウトが可能となります。この方式は、画質を可能な限り損なうことなくズーム機能を実現できるため、古くから高画質が求められる用途で活用されてきました。近年、ズーム技術は大きく進化していますが、光学ズームのこの特長は現在も変わらず評価されています。

また、光学ズーム機能は、低解像度のイメージセンサーを採用した高倍率アプリケーションにおいても、画質を維持する手段として広く活用されています。この方法により、ズームによる画質の劣化を最小限に抑えることが可能となります。

デジタルズーム

デジタルズームは、レンズ光学系を使用する代わりに、画像信号処理プロセッサー(ISP)やソフトウェアを活用して実装されます。これを実現するために、カメラからのソース画像は、特定の領域をクロップすることで拡大され、希望の解像度にサイズを調整します。このプロセスでは、画像が実際の解像度よりも拡大されるため、画質は低下します。

簡潔に言うと、デジタルズームは次のように説明できます:クロッピング解像度 = ソース解像度 ÷ ズーム係数 → 最終的な解像度にリサイズ

例えば、デジタルズームを2倍に設定し、最終的な解像度を1920×1080ピクセルに指定した場合、画像信号処理プロセッサ(ISP)は960×540ピクセルの解像度を1920×1080ピクセルに拡大します。つまり、センサーから最初に960×540ピクセルの解像度部分を切り出して、最終的に拡大されます。

デジタルズームはどのように動作するのでしょうか?

前述の通り、デジタルズームはハードウェアまたはソフトウェアのいずれかで実装されます。ハードウェアベースのズームの場合、画像信号処理プロセッサー(ISP)がズーム処理を担当します。まずセンサーから画像を切り出し、その後ISPが解像度を変更して拡大します。一方、ソフトウェアベースのズームでは、切り出しおよびサイズ変更の処理が全てソフトウェアによって行われます。

画像を拡大すると、特に画像の端部分において画質が大幅に低下し、リサイズ処理によりピクセル化が進むため、シャープネスも著しく損なわれます。しかし、画像信号処理プロセッサー(ISP)を活用してエッジやシャープネスを強調することにより、画質をある程度回復させることが可能です。

Zoom implementation

図1: ズームの実装

e-con Systemsによって設計されたデジタルズーム機能搭載のUSBカメラ

e-con Systemsでは、デジタルズーム機能を備えたカスタムカラーUSBカメラを設計・開発しました。このカメラは、ズーム機能を使用するために特別な光学レンズを必要とせず、より柔軟な運用が可能です。.

当社の最先端カメラ、例えばSee3CAM_130(4KオートフォーカスUSBカメラは、内蔵された画像信号処理プロセッサー(ISP)により、最大8倍ズームが可能です。さらに、このカメラは最大解像度4208×3120ピクセル(13MP)を実現しています。1920×1080ピクセルの解像度で使用する場合、センサーはアスペクト比を保持したまま、ISPに対して4208×2367ピクセルの解像度を提供します。これにより、1920×1080と同じ16:9のアスペクト比が維持されます。

See3CAM_130のズームコントロール機能を使用することで、指定した解像度でズームインし、その後、1920×1080ピクセルの解像度に戻すことができます。このズームコントロールは、100から800の範囲(1倍から8倍)で調整可能で、各ステップサイズは0.01倍単位で設定されています。

高解像度でズーム値を上げる際には、視野角(FOV)を維持するためにセンサービニングが無効化されます。4K(3840×2160ピクセル)の解像度などでは、アスペクト比と視野角を維持するため、See3CAM_130では最大で2倍までのズーム制御が可能となっています。

ズームに関しては、クロッピングがセンサーの中央部分で行われ、「パン」および「チルト」のコントロールは、センサー全体から特定の関心領域を切り出すために使用されます。これらのコントロールは、視野全体にわたり、フル解像度を保持しながら移動することができます。

本記事で、光学ズームとデジタルズームの違いをご理解いただき、お客様の製品要件に最適なズーム機能を選択する際のお役に立てれば幸いです。また、デジタルズーム機能搭載カメラをお客様のアプリケーションに組み込む際にお困りの場合は、camerasolutions@e-consystems.com までご連絡ください。さらに、当社のカメラ製品ラインナップについては、カメラセレクターをご利用いただくことでご確認いただけます。

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