固定フォーカスレンズとオートフォーカスレンズ:用途に最適なレンズの選び方

組み込みビジョンシステムの性能は、レンズの品質と特性に大きく左右されます。焦点距離、絞り、視野角といった光学特性は、取得される画像の鮮明さ、被写界深度、画角を決定づける重要な要素です。これらのパラメータは、センサーのサイズや解像度と相互に関係しながら、システムが視覚データを正確に分析・解釈できるかどうかに直接的な影響を与えます。特にリアルタイム処理が求められるシナリオでは、固定焦点レンズを選択するか、オートフォーカスレンズを採用するかといったレンズの種類が、システム全体のパフォーマンスに大きく関わります。

そのため、それぞれの違いや利点・制約を正しく理解することが不可欠です。本ブログでは、固定フォーカスレンズとオートフォーカスレンズの基本的な特性を整理し、組み込みビジョン分野における代表的な使用シーンとともに、レンズ選定時に押さえておくべき重要なポイントを分かりやすく説明します

固定フォーカスレンズとは?

固定フォーカスレンズとは、あらかじめ設定された焦点距離を持ち、使用中に焦点を変更できないレンズのことです。一度ピントが設定されると、被写体やカメラと対象物との距離が変化しても、自動的に調整されることはありません。この種のレンズは、設計または製造の段階で特定の撮影距離や用途に最適化されており、想定された距離範囲内において、最も高い解像度と鮮明な画像が得られるように調整されています。

固定フォーカスレンズは、安定性が高く、結果が予測しやすいという特長を持つため、一貫した画質が求められる用途に適しています。例えば、組み立てラインにおける品質検査のように、被写体が常にカメラから一定の距離に配置される産業用アプリケーションでは、固定フォーカスレンズは高い再現性と信頼性を提供します。

オートフォーカスレンズとは?

オートフォーカス(AF)レンズとは、被写体の位置や距離に応じて、ピントを自動的に調整できるレンズのことです。設計時や初期設定時にあらかじめ焦点位置を決めておく必要があるマニュアルフォーカスレンズとは異なり、オートフォーカスレンズは、被写体や撮影対象領域が常に鮮明に捉えられるよう、焦点位置を動的に制御します。この自動調整は、最適な焦点位置を検出するためのセンサーと制御アルゴリズムによって実現されており、レンズはリアルタイムでピントを合わせることが可能です。

オートフォーカスレンズは、産業オートメーションから医療機器に至るまで、幅広い分野の組み込みビジョンシステムにおいて、高い適応性と精度を発揮します。例えば、組み立てロボットが異なるサイズや距離にある対象物を検査する場合や、医療用内視鏡が人体内部を移動・操作する場合でも、状況に応じて継続的にピント調整を行い、鮮明な画像を提供することができます。

オートフォーカスレンズと固定フォーカスレンズの選択基準

近接距離

カメラと被写体との距離は、レンズ選定において非常に重要な要素であり、取得される画像の鮮明さや測定精度に大きく影響します。オートフォーカスレンズは、特に約10cmの近距離から無限遠までといった幅広い撮影距離に対応でき、被写体との距離が変動する環境において最適です。距離の変化に応じてピントを動的に調整できるため、常に安定したフォーカスを維持することができます。一方、固定フォーカスレンズは、被写体までの距離が一定に保たれる撮影条件に適しており、フォーカス調整を必要とせず、安定かつ再現性の高い画像を得ることが可能です。

例:様々な高度から作物の健康状態を監視するドローンでは、飛行高度の変化に対応するため、オートフォーカス機能が不可欠です。これにより、地形が変化しても常に鮮明な画像を取得できます。一方、種まき作業を監視する固定式カメラを搭載したトラクターでは、撮影距離が一定であるため、固定フォーカスレンズを使用することで、映像の一貫性を保ちながら、作業の様子を均一な画質で捉えることができます。

被写界深度

被写界深度とは、ピントが合っていると認識される最も近い点から最も遠い点までの距離範囲を指します。一般に、オートフォーカスレンズを搭載したカメラは、固定焦点レンズを用いたカメラに比べて、より広い被写界深度を実現することが可能です。ただし、用途によっては固定焦点レンズが適している場合もあります。これは、すべてのアプリケーションで広い被写界深度が必要とされるわけではないためです。

例:超音波画像診断では、被写界深度を広く取ることで臓器や組織をより包括的に捉えることができ、オートフォーカスレンズの使用により、臨床医に対してより鮮明で全体的な画像情報を提供できる可能性があります。一方、詳細な皮膚観察を目的としたダーモスコープでは、常に一定で高解像度の皮膚表面画像を取得するため、固定フォーカスレンズが採用されることがあります。

照明条件の種類

ご存知のとおり、照明条件の違いは画像の鮮明さに直接的な影響を与えます。オートフォーカスレンズは、低照度環境においても焦点を微調整することで、鮮明な画像を取得することが可能です。一方、十分に明るい照明環境では、固定フォーカスカメラレンズであっても、あらかじめ設定された焦点範囲内であれば高い鮮明度の画像を得ることができます。

例:屋外駐車場では、日中の太陽光、夜間の人工照明、さらには建物や樹木による影など、照明条件が大きく変化する場合があります。オートフォーカスレンズはこのような照明条件の変動にも柔軟に対応できるため、ナンバープレートを鮮明に読み取ることが可能です。一方、全体に均一なLED照明が設置された屋根付き駐車場では、安定した画質を確保する目的で、固定フォーカスカメラレンズが適している場合もあります。

撮影速度

固定フォーカスレンズはフォーカス調整を必要としないため、一般的にオートフォーカスレンズよりも高速に動作します。その設計は適応性よりも撮影速度を重視しており、特定の用途において高い効率を発揮します。そのため、途切れることのない高速な画像取得が求められるアプリケーションでは、固定フォーカスレンズの使用が推奨されます。オートフォーカスレンズのようにフォーカス調整に伴う遅延が発生する可能性がなく、安定した高速撮影を実現できます。

例:セール期間中や祝日などで人通りの多い屋内環境(店舗など)では、オートフォーカスレンズを搭載したキオスク端末が、お客様の動きや取引状況を的確に捉えます。これらの端末は、被写体までの距離や照明条件の変化に迅速に対応できるため、円滑なお客様対応が可能です。一方、屋外に設置されたキオスク端末は、天候の変化や光量のばらつきといった課題にさらされます。このような環境では、撮影速度に優れる固定フォーカスカメラレンズを使用することで、書類の細部や取引情報を確実に撮影できます。これは、屋内に比べて制御が難しい環境下でも、安定した性能を維持するために重要です。

適応性

カメラレンズの汎用性(適応性)も重要な評価要素の一つです。オートフォーカスレンズは、場合によっては設定の微調整が必要となることがありますが、低照度環境を含む様々な条件下で高い性能を発揮します。一方、固定フォーカスレンズは、光量が安定しており十分な明るさが確保された環境であれば、あらかじめ設定されたフォーカス範囲内において鮮明な画像を提供することができます。

例:複数の距離に位置する異なる身体部位を撮影する必要があるMRI装置では、オートフォーカス機能により高い適応性が得られ、撮影対象の深度にかかわらず鮮明な画像を取得することが可能となります。一方、均一性と一貫した撮影パラメータが求められる骨密度測定装置では、測定精度を維持するために固定フォーカスレンズが採用されます。

オートフォーカスレンズが抱える課題と、それらをどのように克服できるのかについて知りたいですか。

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